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REVIEW · フェス・音楽祭

黒フェス2026、6時間の交差点に立ったかのうみゆとSIS

公開 2026-09-08 · 更新 2026-10-27 · CROSSWAVE EDITION

黒フェス2026、6時間の交差点に立ったかのうみゆとSIS
LIVE2 TRACKS

黒フェス SISの演目

主な演目・曲順不問

  • DIVER
  • 愛のバッテリー

2026年9月6日、東京・豊洲PITで松崎しげる主催の「黒フェス2026 ~白黒歌合戦~」が開かれた。「松崎しげるの日」である9月6日に合わせ、2015年から毎年開催され、今年は12回目。松崎をはじめ、ももいろクローバーZ、T.N.T、山内惠介、DJ KOO、歌心りえ、私立恵比寿中学、SISら、異なる分野の出演者が集まった。

午後4時30分から午後10時30分ごろまで、およそ6時間続いた。長さ以上に印象的だったのは出演者の幅だ。アイドルとロックバンド、演歌歌手とポップボーカリスト、DJと芸人が同じプログラムに並ぶ。ジャンルだけでなく、世代も経歴も異なる。一つの好みに応えるというより、異なるファン層と娯楽の領域を意図的に出会わせるのが黒フェスだ。今年、その交差点の一つにSISがいた。

パンサー尾形と共に登場したSIS

SISの最初の登場は単独ではなかった。青い運動着を着たパンサーの尾形貴弘との共演だった。公式ラインアップでも「パンサー尾形 with sis」と予告され、普段は異なる分野で活動する両者が同じ舞台を作った。

黒フェスの性格がよく分かる組み合わせだ。歌手やバンドだけが順に出るのではなく、芸人とボーカルグループが共演し、その次にはまた別のジャンルが続く。観客も目当ての出演者を待つだけでなく、予想外の組み合わせを自然に経験する。

SISにとっても、新しい観客に姿を見せる機会だった。単独公演や既存ファン向けの催しと違い、複数のファン層が交わる大規模公演では、ももいろクローバーZやT.N.T、山内惠介を待つ人も同じ場所でSISを見る。「パンサー尾形 with sis」という意外性は、初めてその名前を知る入口になり得た。

黒フェス2026、6時間の交差点に立ったかのうみゆとSIS · 公演写真

かのうみゆとSISが示した二つの方向

共演の後にはSIS自身のステージがあり、「DIVER」と「愛のバッテリー」を披露した。単独公演に比べれば2曲は短い。だが、多数の出演者が限られた時間を分け合う場では、何を選ぶかが一層重要になる。

「DIVER」は、当時公開を控えていた新しいレパートリーだった。知られたカバーだけでまとめるのではなく、これから見せたい音楽を大勢の観客へ提示したことに意味がある。初めて見る人へ現在を短時間で伝えるのがフェスの役割の一つなら、新曲を選ぶのは自然な判断だった。

続く「愛のバッテリー」は別の方向を示した。韓国のホン・ジニョンの代表曲を、日本の歌手が日本の舞台で歌う姿は、SISの活動の特徴に重なる。とりわけかのうみゆは韓国でも継続して出演し、韓国語の曲を積極的に取り入れてきた。日本の観客へ韓国の歌を紹介し、韓国の観客にはなじみの曲を日本の歌手の声で届け直すことは、活動を通じて繰り返されている。

2曲は興味深い対比を作った。「DIVER」が現在とこれからを示すなら、「愛のバッテリー」は日韓を行き来して築いた軸を示す。短い時間で、新しいSISと、日韓をつなぐSISを同時に提示した。

黒フェス2026、6時間の交差点に立ったかのうみゆとSIS · 公演写真

大勢の観客の前で語られた「韓国のファン」

終演後、MCとSISのトークで、韓国から公演を見に来たファンがいることが語られた。豊洲PITを埋めた大勢の前でその存在が伝えられたのは、短くも象徴的な場面だった。

公演のためにファンが国境を越えること自体は、もはや珍しくない。K-POPを見に韓国へ、日本の音楽を聴きに日本へ向かうのは、なじみのあるファン文化だ。大切なのは、それが世界的なスターだけの現象ではないことだ。比較的小さな規模の活動にも海外のファンが生まれ、実際に会場を訪ねるようになる。

みゆの活動にも、その流れははっきり表れる。韓国での出演や交流が、再び日本の公演へつながる。韓国で出会ったファンが日本へ来て、日本の舞台でその存在が語られる循環だ。音楽交流は巨大フェスや大手事務所だけが作るものではない。一人の歌手と数人のファンが繰り返し国境を越えることも、小さな文化交流になる。

ももいろクローバーZや松崎しげるら知名度の高い出演者が集まる場で語られた点にも意味がある。既存のファンだけの前で韓国での活動を話すのと、異なるファン層の中で実際の海外ファンを示すのとでは伝わり方が違う。韓国でも活動するグループであることを示す、最も直接的な存在が客席にいた。

みゆを見に来て、別の音楽を発見する

多ジャンル構成はT.N.Tのステージにも表れた。アイドル、演歌、ポップスと続く中、ロックバンドの登場で音の質感は大きく変わった。ギターとベースを軸にした強い音と積極的な動きが、それまでとは鮮明な対比を作る。異なる音楽の色を連続して並べる編成だった。

強いロックサウンドとともに、ギターやベースのメンバーも舞台を動き、客席の反応を引き出した。演奏と動きが同時に押し出す勢いは大きい。ベースとバイオリンを持ち替える演奏も加わり、初見の人へ短時間で個性を刻んだ。初めて見るバンドだったが、終演時には、より大きな舞台へ向かう理由が感じられた。

こうした発見は、多ジャンル公演の大切な働きの一つだ。みゆとSISを目当てに買ったチケットでも、会場ではほかの出演者も体験する。逆に、別のアーティストを目当てに来た人が、初めてSISやみゆの声を聴く。ファン層の間で観客の行き来が生まれる。

黒フェスは、有名な出演者を多数集めるだけではない。異なるファンが長く同じ場所に滞在し、普段なら選ばない音楽にも触れる。配信の推薦機能が好みに合いそうな曲を次々と示すのに対し、合同公演は好みの外側との偶然の出会いを作る。

歌心りえ、「道化師のソネット」との再会

SISに続いて韓国とのつながりを示したのが歌心りえだった。「トロット・ガールズ・ジャパン」で韓国にも知られた彼女も、終演後のMCとの会話で韓国からのファンに触れた。二組の出演者がその訪問を語る場面は、韓国のファンの動きを小さく映していた。

特に印象的だったのは「道化師のソネット」。小規模な公演で伴奏音源と共に聴いた時と違い、今回はバンドが声を支え、豊洲PITの空間と音響も加わって密度が変わった。安定した歌唱と感情を伝える力は大きな会場でも保たれ、フルバンドが声の広がりをさらに押し上げた。

みゆとりえは異なる方法で活動しているが、日韓を行き来する舞台で韓国の観客と出会ってきた点は共通する。その関係が日本の会場へ戻り、客席の一部となった。韓国で日本の歌手を知り、その歌手を見に日本へ来る流れが、現場に表れていた。

ももいろクローバーZが見せた、積み重ねたファン文化

後半、ももいろクローバーZが登場すると空気は明らかに変わった。入場前からグッズを身に着けた人は多かったが、始まると規模と一体感がさらに鮮明になった。

印象的なのは応援の仕方だ。どこで何を叫ぶかを客席が知り、大勢のコールがほぼ同時に音楽へ重なって、公演の一部になる。単に人数が多いだけではない。長年、同じグループを繰り返し見てきた中で育った文化があってこその光景だった。

その反応は、これからファンを増やすアーティストにも興味深い対比となる。みゆやSISが同じ文化をそのまま複製する必要はない。ただ、繰り返し会場へ来て曲を知り、同じ瞬間に反応する人々が、時間をかけて一つの文化を作る点は共通する。数人が国境を越える小さな動きも、その蓄積の出発点にある。

DJ KOOから松崎しげるまで、「公演」でつながる

後半のDJ KOOは、また違う方法で客席を動かした。呼びかけに会場全体がリズムで応え、バンドやアイドル、演歌を聴いた空間が、大きなクラブのように変わった。一つのジャンルを追究するより、多様な娯楽を続けて体験させる黒フェスの性格が、よく分かる瞬間だった。

最後は主催者の松崎しげるが登場。今年話題を集めたのは、故・尾崎紀世彦をAI技術で再現し、「また逢う日まで」を共に歌うステージだった。過去の映像を流すだけでなく、現在の演奏と技術を組み合わせ、亡き仲間と再び同じ舞台を作る試みだった。

最後の「愛のメモリー」では、松崎の声とフルバンドに客席の合唱が重なった。午後4時30分からの長い公演の終わりに、異なる歌手を目当てに来た人が一曲を歌う。別々のファンとして集まった人々が、最後は同じ公演を作る観客になっていた。

かのうみゆが立つ舞台の大きさが変わる

みゆの出演時間自体は長くなかった。SISの2曲にパンサー尾形との共演が加わったが、6時間全体から見れば小さな一部だ。

ただ、成長の過程にある歌手にとって、公演の意味は曲数だけでは測れない。自分を知る数十人の前で30分歌うことと、大物のファンが集まる豊洲PITで2曲歌うことは違う経験だ。既存ファンとの関係を深める場と、知らない人へ名前を伝える場。その両方が必要になる。

最近の活動を並べると、この違いはさらに面白い。日韓の大小のステージ、路上や地域の祭り、SISとソロを行き来し、会場の性格は変わり続ける。数メートル先の人へ歌う日も、大型フェスに立つ日もある。一種類の公演を繰り返すのではなく、異なる規模と観客を経験している。

黒フェスも新たな種類の舞台だった。ももいろクローバーZ、松崎しげる、DJ KOO、T.N.T、山内惠介ら、世代もジャンルも異なる顔ぶれにSISの名が並び、みゆは新しい「DIVER」と韓国の「愛のバッテリー」を歌った。

2曲の短い時間に、現在の活動を表す二つの方向が含まれていた。日本で舞台を広げることと、韓国で築いたつながりを、その過程にも持ち続けることだ。

異なる音楽が出会う場所で、次の名前を知る

約6時間、黒フェスは次々と違う顔を登場させた。大きなファン層を持つももいろクローバーZ、初見の人を引きつけるT.N.T、韓国でも知られる歌心りえ。DJ KOOが空気を変え、松崎しげるが代表曲で客席をまとめた。

SISの時間は短かった。しかし、全員が同じ大きさの枠を持つことだけが大切なのではない。異なる段階の歌手が同じラインアップにいて、それぞれのファンが別の音楽を知る。それが合同公演の価値だ。

みゆを目当てに来た人がT.N.Tを知ったなら、ももいろクローバーZやほかの出演者を見に来た人が、初めてみゆとSISを知ったかもしれない。その交換が繰り返され、活動の範囲は既存のファン層の外へ広がっていく。

日韓を行き来してきたみゆにとって、今回も一つの接点となる。韓国のファンが日本の大規模公演へ来て、舞台でその存在が語られ、初めて見た人に新しい名前が届く。音楽の世界は、大きな文化交流という言葉より、こうした小さな移動と繰り返しでつながっていく。

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クロフェス終演後のあいさつ

クロフェス2026・終演後

撮影・チャンネル:Diego YouTubeで見る ↗

「白黒歌合戦」という名であっても、そこには二つに分けられない色があった。アイドルとロック、演歌とポップス、DJとコメディが混ざり、異なる世代とファン層が6時間を共にした。

その色の中に、みゆとSISも一つの場所を占めていた。最も長い出演枠でも、最多のファンを集めた舞台でもない。それでも新しい曲を届け、韓国で続いてきた関係を日本の観客へ見せ、次へ進む理由を残した。

成長中のアーティストが大型フェスで最初から一番大きな名前になる必要はない。まず、異なる観客の記憶に自分たちの名前を残すこと。2026年9月6日、豊洲PITでかのうみゆとSISが得たのは、そうした時間だった。

関連する現場映像

クロフェス終演後、ファンにあいさつする姿を収めた短い映像。

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