REVIEW · 楽曲・アルバム
かのうみゆ「あきらめないで」、一夜の写真と7曲を束ねる方法

公演写真と音源は、同じ時間を保存するわけではない。写真は過ぎ去ったステージの身振りをとどめ、音源はその場にいなかった人にも曲を繰り返し届ける。かのうみゆの1st Photo Album「あきらめないで」は、この二つを一つの商品にまとめた。2025年11月6日、東京・clubasiaで開かれたLIVE「1999」のSpecial Live Photo Bookと、オリジナル7曲で構成されている。
フォトブックを開けば特定の夜の表情や身振りに出会い、音盤を聴けば異なる歌を同じ声でたどることになる。公演の一瞬を近くで見ることと、一曲を繰り返し聴くことがこの構成でつながる。写真で覚えた人が歌ではどんな言葉を渡すのか、気になるフォトアルバムだ。

フォトアルバムが残す日付は一つではない
公式ディスコグラフィーの発売日は2026年1月17日。その後の告知は、同じ7曲のデジタル配信を2月11日と案内した。実物商品の予約案内には2月21日から順次発送ともある。公演日、商品発売日、配信日、発送日は別々だ。一つの発表日にまとめてしまうと、作品に出会う経路の違いが消えてしまう。
写真に収められたのは、それより前の公演である。過去の現場を後から見るフォトブックと、公演後も聴き続けられる音盤が重なる。新しい夜を演出するというより、過ぎた夜と今聴く曲を一度に手渡すところに、この構成の面白さがある。
『あきらめないで』収録曲
収録順
- It’s A New World
- HELLO, TOKYO
- あきらめないで
- Re:Road
- 黒い心臓
- DO IT NOW!
- Terminal
異なる作者たちが出会う7曲
収録曲は「It’s A New World」から「HELLO,TOKYO」「あきらめないで」「Re:Road」「黒い心臓」「DO IT NOW !」「Terminal」へ進む。すでにシングルで公開された曲もほかの曲と並び、一曲ずつ探して聴くときとは違うつながりが生まれる。慣れた歌の前後に別の題名が置かれ、次を聴く順序も変わる。
「HELLO,TOKYO」は本人、Tet Kotani、ペンギンスの共同クレジット。「Re:Road」と「黒い心臓」は本人の詞に西村太貴の曲が合わさる。「あきらめないで」は作詞・作曲とも本人と記されている。複数の作者の仕事を一人の声で続けて聴く点でも、この音盤には異なる出会いがある。
励ましと、割り切れない気持ちが並ぶ
表題曲は、あきらめないでという直接的な励ましを掲げる。学校では恥ずかしがりでもステージで輝ける場面と、自分のペースで歩いてよいという言葉がある。その相手は、すべてを乗り越えた英雄よりまだためらう人に近い。舞台の光と普段の内気さが同じ人の中にあってよい、という可能性を渡す。
その隣にある「黒い心臓」は、愛されても満たされない心を扱う。「Re:Road」には、昔からの応援者と新しく出会ったファンへの感謝という公式の制作背景がある。異なる関係をすべて一つの慰めにまとめれば、曲の違いが弱まる。励ます、求める、感謝する言葉が同じ声の中にあることが、この曲目の幅である。
写真で見た人を音源でもう一度知る
このフォトアルバムは、ステージ上の姿を手元に置きながら、その人のさまざまな歌へ戻れるようにする。写真を先に見た人は曲に別の表情を探せるし、音源を知っていた人は特定の公演の記録へ関心を広げられる。二つの媒体が互いを説明し尽くさないからこそ、次に見る余地が残る。
初期の公開映像やMV、公演写真を行き来すると、同じ曲も異なる瞬間と結びつく。一枚の写真は過ぎた身振りを残し、繰り返せる音源はそのとき聞き逃した言葉へ戻らせる。7曲のリストはその往復にいくつもの出発点を作る。公演の顔を覚えて歌を聴き、歌の中の別の心に気づいてから、また写真を開ける。





