REVIEW · 楽曲・アルバム
かのうみゆ「黒い心臓」、愛されても満たされない心

愛されたいと願うことと、愛を信じられることの間には隔たりがある。かのうみゆの「黒い心臓」は、その隔たりを簡単に飛び越えない。相手を求め、近づいてもそれだけでは足りず、愛の証しを受け取っても次の証しを待つ。題名の黒は悪い恋人の印というより、好きという気持ちだけでは説明しきれない欲望の色に見える。
2025年7月2日に発表された本作は、かのうみゆが作詞、西村太貴が作曲・編曲を担当した。公式の発売告知で本人は、欲しくても届かず、手に入れてもどこか満たされない恋愛感情を描いたと説明している。手に入れても残る渇きという説明は、語り手が同じ愛に異なる要求を重ねる理由につながる。
言葉を求め、言葉の先の証しを探す
語り手は相手から愛の一言を欲しがる。一方、別の箇所では繰り返される愛の言葉よりキスを求める。言葉が不要なのではなく、言葉だけでは心が落ち着かないのだ。欲しい答えを得ることと、不安が消えることは一致しない。その要求は矛盾しながら、一人の心の中でつながっている。
だからこそ、愛され方がどこか足りないという不満が重要になる。相手が何の感情も与えてくれないという歌ではない。受け取った愛情と、期待する愛情の形がずれている。幸福の形を尋ねながら、どんな形なら十分なのか、本人にも簡単には決められない。
一言を欲しがる人、一言を伝えたい人
サビの小さな言い換えが、語り手の位置を変える。初めは相手に告白を求めていた人が、後には自分にその言葉を言わせてほしいと願う。愛の確認を待つ受け手と、自分の気持ちを差し出す送り手が一人に重なる。相手が答えれば終わりそうだった問題が、自分の発話へ戻ってくる。
この動きがあるため、語り手を欲張りな人や被害者に固定するのは難しい。相手への疑いも、自分の内に相手を閉じ込めたい気持ちも表れる。親密さへの願いが所有の欲望に触れる、居心地の悪い地点だ。歌はそれを理想の恋愛に整えず、感情がもつれる姿として残している。
黒い心臓が見る無垢な夢
終盤の夢と眠りのイメージは、現実で得られない確かさを別の場所へ移す。目覚めても夢の中にいたいという願いは、関係を整理した人の態度から遠い。満たされないと訴えながら、その引力から離れたくもない状態が続く。
黒い心臓という題名に、無垢な夢を示す英語が並ぶのも興味深い。純粋な愛と暗い欲望を二人に分けず、同じ語り手に残すからだ。相手を信じたい気持ちは、さらに証しを求める気持ちと同居する。描かれるのは、恋する人が自分自身にも一貫できない瞬間である。
かのうみゆ · 黒い心臓
Road to Bu-Rock・福岡
撮影・チャンネル:Diego YouTubeで見る ↗
音源・制作情報
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